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「そうか・・・、わたしも彼女と一緒に彼女の故郷へ行って。彼女の活躍を、村人に説明してあげれば良いいんだ・・・」。
目覚めの「まどろみ」の中、そんな思いが浮かんで来た。

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彼女と一緒にとる朝食。「どうやって切り出すか?」。

そう考えながら彼女と話を合わせ、できるだけ昨日の戦闘で「あなたは頑張った、あなたは凄い、あなたは英雄よ、じゅうぶん錦(とやら)を飾ったわ」。
といった方向に話を持っていくよう努めた。「あいも変わらず話合わせづらいけど・・・」。


チヨミ(なんで故郷の話になると自動的に愛犬シェイクの話になるのよ)(体のどっかにスイッチでも付いてるの・・・?)。

セラ「シェイクって言うとふつう、sheiking tail(尻尾振り)のシェイクだと思うでしょうお」「違うんだなぁ、うちのシェイクは何と」。
セラ・チヨミ「シェイクスピアのシェイクなんですよお!」。セラ「あれ、分かりました?」。

チヨミ「私もねえ!、記憶力悪い方だけど、さすがに覚えるわよ。13回も聞けば」。

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除隊の話、故郷の話・・・。

話の関を切ろうとした時。食堂にジュバイが来た。
普段なら、彼女が大成功し恋人が本部からやって来れば嬉しい筈。でも本能的に悪い予感がする。

昨日ならともかく今日。しかも普段のラフな姿ではなく、しかも軍服でもなくスーツ姿。彼はこの国の人間。この大前提でこのタイミングでこの姿。

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彼はわたしではなく彼女に向って、敬礼し、口を開いた。
「セイレーン・バルナック大佐、大本営への出頭命令が下っております」。

「なっ!!」。

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わたしの彼がわたしではなく彼女に、しかも恐ろしく理不尽な話をしている。一瞬二の句が継げなかった。

「大佐ってどういう事っ?!、傭兵の彼女に」 「それに彼女は傭兵なのだから、命令じゃなく指令でしょ?。違約金払えば拒否だってできるじゃない」。

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ジュバイ「昨夜政府緊急会議にて特別措置法が制定されました」。

ジュバイ「このアラク共和国に三ヶ月以上滞在する外国人。さらにその中の政府の選んだ人員に対し、アラク市民権を付与することが決定しました」。

ジュバイ「市民権を持つ者は、アラク国民と同等の権利を持ち、逆に兵役・納税の義務が生じます。ただ兵役期間中は、納税義務は免除されるしだいです」。


セラ「おなかがキツイ・・・」。

「ジュバイが彼女に向かって「です」・・・、そう!同じ大佐同士」。
それに「特別措置法というより超法規的措置、ほとんどあり得ない緊急措置!」。全てが理解できた。

わたしは彼女が自由の身になった事を喜ぶばかりだったが、この国は今。滅亡の危機にある。

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「チョッと待って!、一方的に義務を押し付けるなんて人権侵害よ!」。
それに「遡及項」よ!。正規軍登用は傭兵契約締結の際に予知できなかったのだから、契約事項が遡ってるわ!。

ジュバイ「・・・チヨミ・・・。すまん・・・。」。

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目の前が真っ暗になった。
「彼の力ではどうにもならない」。全てが理解できた。

「でも彼女が!」。

そう思った瞬間、ジュバイが再び彼女に向けて続ける。

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ジュバイ「もちろんこの市民権は拒否し、このまま故郷に帰国する事が可能です」。

ジュバイ「釈放金を差し引かない報奨金を支払います。出国の手配も優先的に用意致します」。

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ジュバイ「セイレーン・バルナック大佐。我がアラク共和国のため、一緒に戦って頂けないでしょうか」。

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「しまった!!」。
「ダメ!!、拒否して!!」。声にもならない。

ほとんど考える時間を置かず、彼女は。
「戦いましょう!、アラクの為!錦の為!」。

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「大丈夫ですよぅ、きょうかん。ジュバイ大佐を誘惑したりしませんからぁ」。

「そっちの心配かぃ!!」

「どこまでこの子は・・・・」。

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茫然自失のわたしを後に、彼女と彼が歩いてゆく。

なにもできない。どうすることもできない。

「勘違いしていたのはわたしの方?」。

「彼女にとって、わたしは。自分の信念に口を挟む、ただのスポイラー(邪魔者)だったの?」。

涙も出なかった・・・。

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一週間後、アラク滞在の外国人が首都ワグダッドに集められ。
もちろん「軟禁」ではないけど、一ヶ月間缶詰めになった。全ての情報が完全封鎖された上で・・・。

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首都防衛部隊はいなかった、「どうして?、全軍前線に向かわせたの?、首都をカラにして」。
「だいたい・・・」。「この守備隊ってのが、終戦間近になると暴力集団に変貌するんだから・・・」。

首都付近を飛行する機が、日に日に固定翼機からヘリが多くなる・・・。
地上部隊が近づいている証拠。

缶詰め状態は、アメリカ軍の占領部隊入城により終わった。
そう、アランではなくアメリカだった。

彼女を誘う時、「この国は卑怯」と思ったけど。
この国は外国人を人質に取るような真似はしなかった・・・。後ろめたい気持ちが残る。

驚く事に、すぐさま総選挙が行われ。宗教色の極めて強い、社会主義政党が政権を握り。

アメリカに対する反抗意識もあるのだろうか。驚くほどの保守的・中世的国家が成立した。

宗教上の指導者、カーリマ・ムハンマド・ワーキル・ハドルという人物が元首に据わり、すぐさま。外国人全員に対する退去勧告が発せられた。
わたしは元指令部の立場から、しばらくの滞在が許され。その間懸命に彼女の行方を追ったが、手がかりはつかめなかった・・・。

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ここはアラク王国首都ワグダッド。

三ヶ月前までアラク共和国と呼ばれていた。

彼女との思い出の詰まった地・・・。

明日わたしはこの地を後にする。

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「ようし!!、今度は国防総省にでも潜り込んで、絶対ぜーったいセラを探しだすんだから!!」。
エジプトで彼女の不在を確認し。アレキサンドリアの海岸で、わたしは夕日に向かって叫んでいた・・・。

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続く・・・?

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