今回は、作者のトムキャット戦闘機好きがこうじて。始めてしまいました・・・。

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とことん グラマン F14 トムキャット
ジェット戦闘機の歴史は、30年間トムキャットが主役だった。

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通常、「戦闘機紹介」といえば戦術的、性能面や機能面が中心ですが。
ここではあえて「戦略面」に焦点を当てて、紹介したいと思います。

もちろん戦術面・性能面も、同年代の戦闘機と比べて、極めて特徴的部分を数多く持っていますので。
興味のある方はウィキしてみて下さい。

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なぜ、あえて戦略面に絞るのか?。
実は軍事兵器はみな同じ事が言えますが・・・。
「戦略面」を抜きにして「戦術面」を語っても無意味だからです。

ウィキペディアのように「資料」ならともかく、兵器の本質を語るにはやはり。戦略的背景が必要不可欠なのですね。

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↑ 日本自衛隊F15戦闘機。なぜF15戦闘機なのか?
戦略面を考えずに、性能面だけ語っても意味がありません。

例えば現代日本に絞って例にとっても、仮想敵国や地理的・歴史的背景を抜きにして。「F15戦闘機は凄い」と語っても・・・。

そりゃ確かに「マクダネル・ダグラス社」の宣伝にはなりますが。日本自衛隊軍事力としてのF15の説明にはなりませんね。

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F14戦闘機の性能は驚異的で、同年代の戦闘機から群を抜いていたばかりか。
つい最近。具体的にはステルス時代に入る2000年代に至るまで、約30年間もの間、「世界最強戦闘機」の名を守りつづけ。

なおかつ、この30年間とは、極めてジェット戦闘機の過渡期にあたり。
即ち、「F14の歴史はジェット戦闘機の歴史」と言っても過言でなのです。

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逆に言えば、F14の驚異的性能を検証すると。「なぜこの性能が必要だったのか?」となり。
必然的に、当時の戦略面を、さかのぼって調べる事になり。

しかもその驚異的性能を、F14は「いくつも持っている」ため。
これらを一つ一つ検証してゆくと、結局「F14の性能はジェット戦闘機の歴史」そのものとなってしまうのです。

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↑ 日本では知られていませんが、押しも押されぬ名機。ヨーロッパの「トルネード戦闘機」。作者的には、F14と双璧と評価しています。

大戦後ヨーロッパは、アメリカに頼らない、独自の戦闘機を開発してきましたが、その性能は上がる一方で。
とうとう、この強力な戦闘機の出現に至って。アメリカはNATO軍機に対して、新型エンジンの搭載制限を科すに至りました。
(もちろんこの措置は、ソ連WATOとの緊張緩和とも連動していて。トルネードが原因とは一概には言えません。)

また実戦でもこの機は。湾岸戦争やイラク戦争にも参戦し、実戦を経験し、高い戦果をあげました。
更に言うと。この機の開発にフランスが入っていないというのも、当時のヨーロッパ情勢を物語っていますね。

他の戦闘機ではこうは行きません。

例えば戦闘爆撃機ではF4ファントム戦闘機、制空戦闘機ではF16、マルチロール・ファイターではトルネード戦闘機。
こうして、個別の要素に対してはF14以上に特筆すべき戦闘機が、多数存在しますが。

F14が持っている特筆点の多さは、明らかに他の戦闘機を凌駕しているのです。

↑ アメリカ海軍空母機動艦隊戦闘航空団専用機(海軍専用) グラマンF14トムキャット戦闘機。
全長18.9m 総重量2.6t(F15は1.9t) 最大マッハ2.34 超長距離ミサイル:フェニックス・ミサイル6発
短距離サイドワインダー・ミサイル2発。  また大きな離陸重量から、6.6tもの爆弾搭載能力も有する。

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最大の特徴。トレードマークの「可変後退翼」。

F14戦闘機は、いわゆるH−L−H(ハイ・ロー・ハイ)をこなす制空戦闘機としては、全長19mの巨体です。
しかし、これだけ「欲張り」な性能を詰め込んでいるので、逆によくも、この「小さなボディに詰め込んだ」ともいえるのですね。

ところが皮肉な事に。この「ギューギュー詰め」の性能が、後に「あだ」となってしまいます。
同年代の、高性能ながら「拡張性」を持っていた大型戦闘機。F15戦闘機より早く、現役引退を余儀なくされてしまったのです。


更に言うとF14は・・・。

新兵器への拡張性の乏しさもさることながら。「あまりに莫大な維持費」が足かせとなってしまいました。
確かに、性能を落とせば安価でも「維持」は出来ます。実際イランでは、いまだに現役でF14を使っているのですから。

しかしこれ(イラン軍F14)は、「高性能機F14」とは程遠く。言葉は悪いのですが、「空飛ぶミサイル発射装置」のレベル。
地対空ミサイルを空対空ミサイルに改造した即席ミサイルを、「空中発射できる」というレベルなのです。

「F14の性能」を維持するには、安価な制空戦闘機が毎年買える(揶揄的表現ですが)くらい。「バカ高い」のですね。

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← なにかと、F14と引き合いに出されるF15戦闘機。
前記通り、F14が艦載専用機(海軍航空隊)なのに対して、空軍の雄。高い拡張性から、現在でも現役バリバリです。
実は、官僚的な「空軍」「海軍」という垣根を越えて。なんと「ガチンコ勝負」でF14と直接対決(模擬戦)やった事もあります。
(結果はF14圧勝、F15惨敗でした)

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ハイ・ロー・ハイとは・・・。
「ハイ」はハイスピードのハイで「ロー」はロースピード。
具体的には、マッハ2以上のハイスピードで現場に急行し、ロースピードの空中戦(ドッグファイト)をこなし、ハイスピードで回避して帰還する。
という意味です。


敵機接近!

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F14が、マッハ2以上のハイスピードで急行。まずは両軍機共に、長距離誘導ミサイルを発射します。
(F14は、なんだか一機でたくさんミサイルを撃っていますが。F14はなんと、一度に6機(6発)の攻撃が可能なのです)

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そして接近戦のドッグファイト。接近戦は比較的ロースピード(低速)で行います。

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重要なのは「ロー」です。
超音速の戦闘機は多く存在し、F14と同等以上の速力を有する戦闘機もたくさんあります。

← いかにも早そうな、ロッキードF104スターファイター戦闘機。もちろん本当に早いです。
F14よりずっと前の世代でも、F14とほとんど同じ、マッハ2.2をマークしていました。
とは言え。旋回性能は極めて悪いので、ドッグファイトは苦手です。

F15もそうですし、東側のMig戦闘機にも多く見られます。(Mig25等はマッハ2.8が出ると言われています)
ところが、スピードは速いかも知れませんが。

空中戦のドッグファイト能力で言ったら「F14の比でない」のです。

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超高速機は押しなべて、空気抵抗を減らすため、出来るだけ翼も小さくしなければなりません。
良い例がF104戦闘機ですね。

しかし翼が小さいと、まっすぐ飛ぶ分には良いのですが。いざ旋回するとき、旋回半径が大きくなり。機動性が著しく低下して、ドッグファイトが苦手。
もしくはドッグファイトが全然できない。なんて事にもなるのです。
(F104等は、無理な旋回を行うと、乱気流を発生し。最悪墜落に至ってしまう程です。(注))

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この。「高速時」と「低速時」の、相反するファクターを。高次元で両立させているのが、F14トムキャットのトレードマーク。
後退型可変翼。という訳です。

F14戦闘機は、その超高性能故の高額維持費により、ライバルのF15より先に引退を余儀なくされました。
通常、引退した制空戦闘機は。攻撃機性能が改良されたり、他国に売却されて、細々と飛び続けることが多いのですが・・・。

F14はあまりに高性能。戦略上の理由もあって、他国へ渡る事無く、まるで「封印」されるがごとく。
アッというまに、ほとんど全機解体されてしまいました。 ↑ 2006年 作戦飛行での最後の発艦。

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(注) 航空機に限らず、どんな乗り物でも、自動車でさえ。
例えば100キロで走っている時に、30キロの時と同じハンドリングをすればバランスを崩してしまうので、通りは同じですが。
F104等は非常に神経質で、また。兵器を搭載すると、これの発生する乱気流の影響も受ける、不安定性を持っていました。

ちなみに。
操縦系にコンピュータ制御が導入されると、例えば「超音速時の操縦」と「低速時の操縦」が、コンピュータによって「最適化」されるようになり。
パイロットの操縦ミスによる制御不能状態リスクを、大幅に軽減できるようになりました。
(特にF16戦闘機に搭載される、「フライトソース」と呼ばれる姿勢制御コンピュータは最高峰です。)

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ここからは歴史を追いながら、F14誕生の背景を検証します。

まずは「大前提」です。
一見関係ないように思えますが、これを考慮に入れないと、考えが進まないので。先にご紹介します。

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この写真は、ご存知、アメリカのシャーマン戦車とドイツのタイガー戦車です。
見るからに高性能、頑丈で、それでいてカッコよくて。「究極」の名のふさわしいタイガー戦車。
対するシャーマン戦車は、キッチュなデザインで。マシュマロマンのような可愛らしさはあれど、到底強さは感じられませんね(笑)。

コレだけ見ても、アメリカの戦略思想が垣間見えます。アメリカの「物量作戦」。
もちろん状況にもよりますが。基本、「一台の高性能戦車より、安価な二台」という事ですね。

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この大選定のもと、F14誕生に大きく関わる事件が、朝鮮戦争で起こります。

余談ですが。
たしかに朝鮮戦争以前の事象。例えばアメリカのジェットエンジン開発思想の失敗(遠心型)や、後退翼研究の大幅な遅れなども。
間接的には関わってきますが、ヤッパリ朝鮮戦争で起こった事件は大問題で。アメリカの「トラウマ」になったと言っても過言で無いでしょう・・・。

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朝鮮戦争で何が起こったのか?そう。いわゆる「ミグショック」です。

↑ 左)アメリカ海軍F9Fパンサー戦闘機  右)ソ連(中国義勇軍)Mig15戦闘機。

戦後各国は、ジェット戦闘機の開発に極めて大きな力を注ぎ。戦闘機の性能は一気に進みました。
実はジェット機の性能を飛躍的に高めたのは、敗戦国のドイツで。具体的にはそれは、「軸流エンジン」「後退翼」の発明によるものでした。

ところが。どういう訳だかアメリカは。まぁ自国で「遠心型エンジン」を開発した事もあってか、「軸流型エンジン」を長らく採用せず。
ここに至って。さらには後退翼さえ採り入れない、F9F戦闘機を採用します。(しかし性能が低く、爆撃機(攻撃機)として使われました)

結局、この爆撃機(攻撃機)でMig15に対峙せざるを得なくなるのですが・・・。
アメリカ軍パイロットは、当時最高峰の技術であり。Migに対して一機しか撃墜されなかったし、逆にMigを撃墜した事だってあるのですが。

Migによって受けたアメリカ軍の被害は甚大であり。
これはパンサーの性能というより、パンサーがMigに対して。残念ながら「相手にならなかった」という方が正確でしょう・・・。

Mig15戦闘機の出現により、アメリカの戦略爆撃機は甚大な被害を蒙り。
更に深刻なことに。爆撃機の護衛につけたパンサー戦闘機などの、アメリカ軍制空戦闘機が全く歯が立たなかったのです。

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事の顛末は・・・。

アメリカはあわてて「F86セイバー戦闘機」を開発させるに至り。おまけにこのF86は、極めて高性能機だったため。
「ジェット戦闘機史上最ベストセラー」の名を頂く事となりました。(つまり制空戦闘能力の意義を思い知らされた訳です)

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↑ いよいよ真打登場? 押しも押されぬ名機中の名機。ジェット戦闘機史上最ベストセラー ノースアメリカンF86セイバー戦闘機。

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朝鮮戦争勃発時。
アメリカはいまだ第二次大戦当時の戦略を引きずっており、高高度からの重爆撃機によるジュウタン爆撃を開始し。
Mig戦闘機の登場により、爆撃機に甚大な被害を出し、「制空戦闘機」の重要性を思い知らされました。

普通に考えれば・・・。
これはもちろん、例えばヨーロッパの戦闘機も、当然この考えの基に、開発が進んでゆくのですが。

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普通は。「制空戦闘機」と「攻撃機」の二本柱。

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に。なると思うのですが。残念ながらそうはなりませんでした。
言葉は悪いのですがアメリカは、この後。制空戦闘機・攻撃機、「どっち付かずの駄作機」の時代を迎えます。
ヨーロッパは違います。ヨーロッパはこの後も、素直に開発を続け。例えばミラージュやドラケンと言った名機を生み出して行きます。

アメリカには申し訳ありませんが。駄作シリーズ。F100から始まる、F1二桁番号、いわゆるセンチェリー・シリーズに固執してしまうのです。

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↑ 左)イタリア軍フィアットG.91戦闘機  右)アメリカ軍F100スーパーセーバー戦闘機。

フィアットG.91戦闘機は攻撃機だし、音速も出ないので、F100戦闘機と直接的には比べられませんが。
開発時はどちらも制空戦闘機(もちろん戦術戦闘機能力含む)として開発されました。

ひじょうに旋回性能の良いフィアットG.91は、ドッグファイト能力に長け。
その後長年に渡って改良が施され、日本では馴染みがありませんが。まさしく名機の名を戴くこととなりますが。

一方のスーパーセーバーは。実戦配備直後から、「空中戦」能力が低いことが露呈し。すぐに対地支援機・攻撃機として使われるようになってしまいました。

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↑ 左)フランス軍ミラージュV戦闘機  右)アメリカ軍F106デルタダート戦闘機。

この二機はかなり近いコンセプトと言えるでしょうか。
デルタ翼戦闘機を、後のXまで含め、「芸術」のレベル(大げさです)まで押し上げた傑作。フランス空軍ミラージュ戦闘機。

一方のデルタダートは、コレも残念ながら制空戦闘能力に乏しく。配備後すぐに、こちらは主に「電子戦用機」として使われるようになりました。

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なぜアメリカは制空戦闘機能力を高めようとしなかったのか?
主な理由となる因子が、朝鮮戦争終結のころ登場します。赤外線追尾ミサイルの登場です。


↑ アメリカ軍赤外線追尾ミサイル AIM−9空対空ミサイル。
当初は命中率が悪かったのですが、センサー機能が向上し。発射されたら、ほとんど回避不可能と言われる脅威の兵器です。

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開発当初は性能が低く、その有用性に疑問符が付いていましたが。
すぐさま改良が続けられ、朝鮮戦争停戦の三年後に起こった台湾海峡の台中紛争で、大きな戦果を上げるに至りました。

赤外線追尾ミサイル・サイドワインダー。
全世界の空軍にとって、これは驚異的存在となりました。特にベトナム戦争頃からは「独壇場」と言っていい程の状態となります。

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もちろんソ連も、サイドワインダーを模倣したアトール・ミサイルを開発しますが。性能差は著しく。
更にサイドワインダーG型頃からは、他国の追従が不可能な状態になりました。

理由は。
ロケット技術そのものは、当然ソ連も高い技術を持っていますが。何より赤外線センサー技術。
即ちアメリカは電子技術において、ソ連に対して大きなアドバンテージを持っており。特に半導体技術が導入されたG型以降は、性能差が開く一方になってしまったのです。

← ソ連ニキータ・フロシチョフ第一記長とロバート・ニクソン副大統領の間で行われた、筋書き無しのガチンコ討論。
いわゆる「キッチン討論」。

両者共に、空気読めない強気の性格も災いし(笑)。討論内容は「お粗末」そのもの。
「国力自慢」と「技術力自慢」が錯綜し、主張がかみ合わないまま終わってしまいました・・・。

(お互い顔も見ず、共に通訳に向かって熱弁を吐く姿は。まるで通訳と討論しているような始末でした。)

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この場でニクソンは、ビデオ技術を主張しますが。実はこの電子技術、とりわけビデオCCDに使われる「光電子増幅技術」こそが。
赤外線センサーに対しても、他の追従を許さない。まさにアメリカ独壇場となったのです。

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ちなみにこの「ニクソンの強気」。が。この数年後に、日本政府に深刻な危機をもたらすのは有名ですね。日本政府への事前連絡無しの対中国交正常化と。いわゆる通貨固定レートの解消です。

この事件は当時の日本(佐藤内閣)を震撼させました・・・。

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こうした背景を元に、アメリカ軍はベトナム戦争勃発に至る時期から。
後に「大誤算」と言われる、ビックリするような防空戦略を打ち出します。

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サイドワインダーが搭載されたF86セイバー戦闘機は、まさに鬼に金棒。
空中戦のドッグファイトにおいて、極めて高い制空戦闘能力を持つに至りました。

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しかしてこの頃は、技術革新の特に激しい時代であったことも手伝い。
大きな戦果をあげ、高い性能を有したこの傑作機も。

残念ながらすぐに陳腐化してしまい。朝鮮戦争からベトナム戦争に至る期間に。

アメリカは具体な機種交換と、防空戦略の根本的変更を迫られ。
まさに世代代わりの時期を迎えます。

← センチュリーシリーズ戦闘機群。F101とF102には機銃がありません。
特にF101などは護衛機なのだから必要だと思うのですが・・・。

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アメリカの新たな防空戦略。これは極めて「偏った」ものでした。

具体的にそれは。
全ての空中戦はミサイルで決する」。
というものでした。

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F86の後、90番台を飛ばして作られた。全機超音速の新鋭戦闘機群。
F100、F101、F102、F104、F105、F106等のいわゆるセンチュリー・シリーズ。

これは当時のアメリカの戦闘機思想を、如実に物語っています。

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アメリカの新戦略は、内容そのものは簡単明確。つまり低速で行う空中戦、ドッグファイトを一切捨てて。
「ミサイルだけで敵機を攻撃しよう」、というものでした。

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超音速の高速飛行で、長距離ミサイルを発射し。接近戦になってもスピードを落とさず。
一撃離脱」を繰り返しサイドワインダーで攻撃する。そしてミサイルが尽きたら、そのまま超音速で離脱する。というもので。

超音速で空中戦を行えば、両機が射程内に留まる時間は極めて短いのだから、機銃掃射など役に立たない・・・。

そんな理由も手伝って、ミサイル絶対主義は信憑性を増し。実際に実行に移され、センチュリーシリーズは生み出されました。が。

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これは誤算であることが、ベトナムの空で証明されてしまいました。

ベトナムに参戦したアメリカ軍機たちは。
赤外線追尾ミサイルの有効射程に付けようと、旋回しようとしてもぜんぜん曲がらない。

更には、Mig戦闘機だって音速機は多数存在するわけで・・・。
旋回しようと四苦八苦している内に。

旧式のMig戦闘機に機銃掃射を受けるという。辛酸をなめる結果になってしまいました・・・。

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「制空戦闘機」と「戦術戦闘機」と「攻撃機」・・・。

上記のフィアットG9.1やF100と絡めて、アメリカの戦略。というより航空機理念が、どれ程「ちぐはぐ」だったか物語る事象を紹介しましょう。

それはA−4スカイホーク戦闘機です。
F100戦闘機とほぼ同時期に就役したこの「名機」は、F100が制空戦闘機とて開発されたのに対して、あくまで攻撃機。つまり戦術爆撃機として開発されました。
しかして蓋を開けてみれば、極めて良好な旋回性能により。なんと攻撃機なのに空中戦さえこなすこともでき。結果的に、フィアットG9.1と、かなり近しい戦闘機となってしまいました。

結局。空中戦を行うには、F100戦闘機は「大きくなり過ぎた」という事ですね。

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センチュリーシリーズには何と、制空戦闘機なのに「機銃の無い機種」まで存在しました。
更に言うと、当時のアメリカが本気でそう思っていたかは定かではありませんが。「もはや有人戦闘機そのものが、近い将来無くなる」という想定の基。

ロッキードF104スターファイター戦闘機などは、「最後の有人機戦闘機」というふれこみで世界に売却されました。
(ちなみに、有名なF4ファントムU戦闘機も機銃がありませんでした。)

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そんなこんなで、極端な防空戦略を引きずったまま、アメリカは地獄の戦争に突入します。
ベトナム戦争。この戦争は航空戦力の敗北に留まらず。ご存知の通り。アメリカにとって悪夢の戦争。

いつ終わるかまったく見通しの付かない泥沼の消耗戦。
あげくの果てが、アメリカ軍を頼りにしていた南ベトナム軍と市民を置き去りにしての撤退劇・・・。

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さてベトナム戦争の一般論はさておき。
実はベトナム戦争の空中戦でも、アメリカ軍機は北ベトナム軍機を、割合にして2倍以上撃墜しているので。前記の、「航空戦力の敗北」は正確ではありません。

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しかして北ベトナム軍、及びこれの義勇軍機は。
アメリカ軍機とは比べ物にならない程、性能の低い旧型機だったので。
もっと戦果をあげてしかるべきだし。

ミサイルで決着するのだから、そもそも「被害が出ないはず」が戦略上の想定範囲でした。

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ところが蓋を開けてみれば。
ミサイルが当たりやすいポジションに回り込むことができず。

逆に、旧式のミグ戦闘機に機銃掃射を受ける始末・・・。

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こうして。
何度目になるでしょうか?アメリカはまたしても「制空戦闘能力」の重要性を思い知り。
とりわけ「旋回性能の良い戦闘機」の開発に迫られました。

なんだか朝鮮戦争の時の、F86開発促進と似ています。いわゆる二の舞ですね。

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こんな、アメリカの「紆余曲折」のなかで。F14トムキャットは産声を上げたのでした。

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通常。
高速戦闘と低速戦闘が両立しにくい場合、是非も無し。高速戦闘用と低速用を分けるしか無いと考えるでしょう。
ヨーロッパの戦闘機も。この思想の元で開発が進められてゆきます。

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← スウェーデン・サーブ35ドラケン戦闘機。

マッハ1.7を出せるのに高速道路の短い距離で離着陸でき。特徴的なボディーや翼形状は後世の、世界の戦闘機に受け継がれており。
極めて先駆的。逆にスウェーデンで、この時期にこの機種が完成に至ったのは驚くべきと言えるほどです。

費用対効果からも。
超音速機というものは、具体的には交換部品も多く、一度飛ぶ度に点検箇所も多く。メンテナンスコストの掛かるものですが。
このドラケンは非常にメンテナンスが容易に設計されており、極めて費用対効果の高いのも特徴です。

まさに名機の名にふさわしい、ヨーロッパの傑作です。

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ちなみに、ヨーロッパの戦闘機は、本当に多彩です。低速用・高速用にとどまらず。
ヨーロッパという変化に富んだ環境や、地理的条件、仮想敵との位置関係などなどを加味し。大変に細分化が図られています。

← フランス・ミラージュ戦闘機。

欧州域内においてフランスの国力は非常に高い、大国なので。
「そりゃフランスの国力もってすれば高性能機作れるだろ」ってのもありますが。まさにデルタ翼機世界最高峰とも言える、傑作機です。

この高性能は「X(五、写真はV)」を経て。なんと遠くイスラエルのクフィルC2戦闘機に受け継がれます。

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高速のミラージュ、海軍用エタンダール。北欧サーブの一連の名機、高速道路から発進するドラケン・ビゲン。フィアットの軽戦闘機。
そして極めつけの変り種。チョップリフト(垂直離着陸)ファイター、英国のハリヤー戦闘機。

← 英国ホーカー・シドレーハリヤー戦闘機(写真はハリヤーU)

間違いなく、ジェット戦闘機史上に、大きくその名を残す、言わば伝説の名機。

とは言え。
実際は極めて燃費が悪く、行動範囲が極めて狭いため。実用レベルにおいては、実戦配備後も、疑問符が付いたままでの運用となりました。

とは言え。
世界各国で開発された垂直離着陸機は、このハリヤーより更に性能が低く、実用レベルには程遠かったので。

最新鋭機現用F35戦闘機登場までの長い年月にわたって、「唯一のVTOL機」として君臨し続けました。

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もちろん駄作。例えば可変翼ミラージュのG−8のような機種も時々輩出しますが。
全体的には、アメリカから比べて堅実な思想の元。より実用的な戦闘機開発を続けられたと言えます。
こうして生み出された、いわば欧州機の集大成が「トルネード戦闘機」だったのですね。

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話をアメリカに戻しましょう。内情も少し関わってきますが。
当時アメリカは全体的に好景気で、空軍内部も、F86・P−80等の空前のベストセラーにより、莫大な利益に沸いていました。
ところが残念なことに。組織が肥大化し、合理的とは言いがたい組織運営を始めます。

いわゆる「戦闘機マフィア」の台頭です。

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どの世界でも同様ですが。
こうして、肥大化し合理主義を失った組織に、もはや正常な戦略は望めません。「利権」を追求するだけの組織になってしまうからです。
(戦闘機マフィアが良いとか悪いとかではなく、こう言った「封建的」組織構造そのものが、非効率的という事です。)

もちろん、アメリカ空軍は世界第一級の軍事組織ですから、それなりの高性能機を生み出しはします。F15しかりF16しかりです。
しかし、そもそも利権を傘に着ているので「費用対効果」は、極めて非効率的といえるでしょう。

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F14誕生の直接的背景・・・。

例えばこの期のアメリカ軍機。
言葉は悪いですが、腐敗組織のアメリカ空軍によって輩出されたF16も。これはハッキリ言って名機・傑作機です。

腐っても鯛」と言えるでしょうか?

ゼネラルダイナミックス(ロッキード・マーティン)F16ファイティングファルコン戦闘機。

F86以降、長らく「空中戦能力に乏しい」制空戦闘機開発が続いた末に。
「やっと」と言ってはなんですが、本当に「やっと」登場した、アメリカ空軍の傑作中の傑作制空戦闘機。

もちろん相応の「高価」な機種ではありますが。マッハ2で飛び、長距離空対空ミサイルを運用でき電子装備も強力で、もちろん空中戦ドッグファイトも超一流。
9tの爆弾が積めて、小型(中型かな?)ながら慣性航法装置を持つ、つまり戦闘爆撃能力も有する、超多目的機で。抜群の費用対効果を有します。

まぁ唯一の弱点は、単発のため海上。特に北極海域での運用時に、パイロットの生還率が低下してしまう(エンジントラブル時)事がある他は。
ハッキリ言って、「これがあればF15要らないかな」という超高性能戦闘機です。

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NATO軍はアメリカに比べて、予算面で苦しいので、費用対効果に対して、よりシビアですが。
そのNATO諸国もF16は絶賛していますし、パイロットレベルでも同様です。しかしF15はどうでしょう?

F15とF16というのは、「ハイ・ロー・ミックス」と言って。高速戦闘と低速戦闘を、2機種で補い合うということで。
戦略的にも、F16はF15と同じエンジンを使っており。もともと併用を念頭においていたのですが。

F15はNATOには配備されませんでした。(駐留軍除く)

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「F15は戦略上を考慮して売却国が選ばれた」と言われますが。NATO軍はアメリカにとって極めて重要ですので。
この場合、支援の制限と言うより。「費用対効果」が原因と言って間違いないでしょう。それ程、F15戦闘機というのはバカ高かったのです・・・。

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マクダネルダグラス(ボーイング)F15戦闘機。(F15Eストライク・イーグル戦闘機)
本文ではF14の突出した性能を説明するため、F15を、悪い意味で度々引き合いに出しましたので。今度はF15の素晴らしさをチョッと紹介します。

F15戦闘機はご覧の通りの大型機で、見るからに強力なエンジンを搭載する。多目的戦闘機です。
高い拡張性から、「オフ・ボア・サイト」ミサイル装置や、新開発の装備に対する拡張性を有し。

なおかつ、戦闘機能力とは直接的には関係ない機能。
例えば。世界最速記録のためだけに改造された「F15ストリークイーグル」、ICBM(大陸間弾道弾)迎撃ミサイル(スターウォーズ計画)発射型。等等。
戦闘機の枠組みを越えて、「なんでもできる飛行機」ぶりを、しかも40年もの間、世界に見せ付けて来ました。

なかなか実戦配備に難航していた「ステルス戦闘機」が出てきて、やっと最近アメリカ軍での定年退職(笑)が叶った。
ある意味、「本当の意味での名機」です。

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そしてその「拡張性」を示す最たるものが、作者的にこのF15Eストライク・イーグル戦闘機。と、思っています。

ウィキペディア等、ネットで調べるとこの機種は。「マルチロール・ファイター(多目的戦闘機)」や、「戦闘爆撃機(F4等と同じ)」として紹介されていますが。
もちろんウィキペディアの「信憑性」をどうこう言う訳ではありませんが。

この戦闘機は、多目的機・戦闘爆撃機ではなく。「デュアルロール・ファイター」です。

任務そのものは戦闘爆撃と似ていますが、明らかな違いがあります。
戦闘爆撃とは。爆弾を満載して敵陣深く進攻し、爆弾落とした後に、上がって来た敵機と空中戦で応戦しつつ撤退する。というものですが・・・。

このF15Eは、「爆弾を満載した状態でも空中戦ができる」という想定のもとに開発されたものです。
もちろんこの性能が、本当に実現できたか否かは別ですが(実際すぐに派生型F15SEに改修されてしまいました)。

ハッキリ言ってこれは、他の機種では「絶対不可能」です。
爆弾を搭載したまま空中戦を行うなど、他の機種ではまさに自殺行為なのです。

つまりF15は、圧倒的なエンジン出力で、爆装していてもスピードが出るので、「こんな無茶」が可能なのであって。
つまりデュアルロール(二つの任務)の意味は、「制空戦闘」と「対地攻撃」を同時にこなす。という意味だったのですね。まぁガンダムみたいなもんです(笑)。

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このページの冒頭で記した、アメリカの軍用兵器に対する、費用対効果の理念を覚えていますか。
第二次大戦期までアメリカは明らかな物量作戦でしたが。戦後のアメリカは全体的に、「世界最強」を念頭に置きながら兵器開発しているふしが見られ。

もちろん。
ブラッドレー戦車の性能は?とか、「ベレッタとグレッグじゃどう考えてもグレッグだろ」とか。
兵卒レベルではあまり関係ないかも知れませんが。

全体としては「明らかに世界最強」。
費用対効果さえ度外視し、まるで傍見、「意地をはるように」見えるほど。超高性能を追求するように、変化してきました。
(センチュリーシリーズだって、結果的には駄作でしたが。極めて高性能機であることは確かです。)

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そしてこの、「アメリカの最強主義」の頂点に君臨するのが・・・。
もうお分かりですね。アメリカ軍空母機動艦隊、とりわけ。最大空母「フォレスタル級」空母です。

100機近い戦闘機を搭載し、中の戦闘航空団機2〜4個中隊は。軽戦闘機なら、本当に10程度を相手にできる程の超超高性能機。
それだけも、単純計算で600機もの戦闘機に匹敵するもので。

「アメリカ軍空母は小国一国の空軍力に匹敵する」と揶揄されましたが、本当にその性能を有していた訳です。

アメリカ軍空母フォレスタル。
大戦後アメリカは、ジェット戦闘機対応の空母ミッドウェー級を完成させ。さらに大型のものがフォレスタル級で、これをもって大体の定番として。
これをベースに原子力対応にしたのが、世界最大空母「ニミッツ級」です。

アングルドデッキ(降着甲板)と、四本の発艦カタパルトという定番形式を取り入れた、世界最強空母です。

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そしてその。
1対10という驚異的戦術前提を可能にするべく開発されたのが、「グラマンF14トムキャット」だった訳です。

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編集後記

但し。
このページのここまでの論議ですと、大分異論が出てくると思います。

なんと言ってもF14誕生の背景に「ソビエト連邦があまり出てきません」。
作者は意図的に、この部分は大きく取り上げませんでしたが。
議論によっては、「対ソ戦略こそがF14誕生の最大要因」と結論付けても不思議はないこともわきまえています。

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「じゃあなぜ?」と言えば、これは単なる持論ですが。
戦後早い時期から、あまりソ連が大きく関わっていない戦争も、世界各地で起こっており。

空母機動艦隊そのものは、「対ソ戦略とは言いがたい」と思っている事が一点。
(注意:「対ソビエト戦略」と、「対ソビエト 戦略」を分けています。)

また当時のソ連と北朝鮮は、数千機以上、万に近い戦闘機を保有しており。
要因というのは、いくつも複雑に絡み合って一概には言えませんが。こと対ソ戦略だけを純粋に考えれば、第三・第七艦隊のトムキャット150では・・・。

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そりゃ「対ソ戦略の一環」にはなるでしょうが、やはり「直接的要因足り得ない」と結論しているのが。理由です。

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